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フランソワ・ジェラール作「ダフニスとクロエ」 Daphnis et Chloé


ダフニスとクロエ西洋の絵画を見ていると、頻繁に出会うテーマがあります。
「ダフニスとクロエ」もそのひとつです。

「ダフニスとクロエ」は2〜3世紀頃、ロンゴスというギリシャ人によって書かれた物語で、若い二人が主人公のラブストーリーです。

絵画だけでなく、音楽や文学にもこの作品をテーマにしたものが見られます。シャガールが挿し絵を描いた絵本や、モーリス・ラヴェルのバレエ音楽として、ご存知の方も多いかもしれません。

 




「ダフニスとクロエ」あらすじ

舞台は、エーゲ海に浮かぶレスボス島。

ダフニス(男子)とクロエ(女子)は捨て子。ダフニスはヤギに、クロエは羊に育てられていたところを、それぞれ別のヤギ飼い・羊飼いに発見され、引き取って育てられる。
やがて美しく成長した二人は、出会って恋に落ちる。ダフニス15歳、クロエ13歳。


しかし「恋」というものを知らない二人は、相手を求める自分の感情をどう処理してよいか分からず、「これは病気なんだ」と思い込む。


そこへある老人が現れ、エロスの存在と恋に効く薬を3つ教える。

恋に効く薬・・(1)抱き合う (2)接吻する (3)衣服を脱いで一緒にねる


「自分たちは恋というものに落ちているんだ!」と分かった二人は、さっそく教わったことを実践する。
(1)と(2)は難なくクリア。でも(3)がよく分からない。
老人は「衣服を脱ぎ一緒にねる」とだけ教えたので、二人は本当に、衣服を脱いで一緒に寝るだけだった。


「どうもおかしい」と思いながらもどうしてよいか分からない二人。そこへ美しい青年ダフニスに目をつけていた年上の女性が登場して、色事の手ほどきをすることになり……。

都市間の闘争があったり、海賊に襲われたり、といったエピソードを交えつつ、最後は、捨て子だった二人はどちらも高貴な生まれであることが判明し、本当に結ばれて、完。

ダフニスとクロエー (岩波文庫 赤 112-1)


相手を思う自分の気持ちをどうしたら良いのか分からず、戸惑う二人。
少年と少女を通じて、誰もが持つ初恋の記憶を思い出してしまうようなストーリーです。

作者は序文でこんなことを言っています。

「この物語が、すでに恋をしたことのある人にはその思い出を蘇らせ、まだ恋を知らぬ人にはその手引きとなることを願っている。この世に美しいものがある限り、眼がものを見る限り、エロースの手を逃れた者はかつてなく、これからもあり得ぬからである。」

恋に落ち、相手を想い、悩む。遥か昔から人間が繰り返して来たこの営みは、現在も途絶えることはありません。人類にとって普遍的なテーマであるが故か、2〜3世紀頃に描かれたというこの古い物語が、時代も、洋の東西も、ジャンルも越えて、多くの芸術家たちにインスピレーションを与え続けているのです。

ルーヴル美術館にも「ダフニスとクロエ」をテーマに描かれた作品があります。

ダフニスとクロエ

「ダフニスとクロエ / Daphnis et Chloé」 フランソワ・ジェラール作 
 1824〜1825年 <ドゥノン翼・2階/フランス絵画の大作>

目を閉じて、ダフニスの膝に 頭を乗せるクロエ。クロエのために、一心に草の冠を編むダフニス。
安心しきって幸せそうなクロエの表情に心が和みます。

しっとりとした森の空気、土や草の匂い、水の流れる音、微かに降りてくる木漏れ日、二人の気持ち。
足の裏に感じる土の感触までリアルに想像できるような、五感のみならず 六感にも訴えてくる作品です。

ジェラールが活躍していた頃の美術の世界では「絵画とはこう有るべき」という概念があり、そこに合致するような作品だけが世に認められていました。

そのため、この頃の絵画は、作者が違ってもなんとなく絵の雰囲気や傾向が似ています。その意味では、面白みに欠けるという見解もあるでしょう。しかし、新古典主義の王道とも言うべき端正な筆致は、この古い物語の主人公たちが持つ純粋さや瑞々しさを表すのに、とても適していると思うのです。


ドゥノン翼2階この作品が展示されているのは、ルーヴル美術館のドゥノン翼2階、フランスの大作が多数並ぶギャラリーです。この作品も縦横2メートル以上ある大きな作品です。

周辺には、世界史や美術の教科書などでも馴染みのある作品が多く、人気のあるエリアです。

作者の「ジェラール」は、ダヴィッド( ← 新古典主義の大御所で「ナポレオン一世の戴冠式」を描いた人です)の弟子でもあった画家ですが、日本ではその名はあまり知られていないかもしれません。

アモルとプシュケでも、左の写真のこの絵なら「見たことある!」と言う方が大勢いらっしゃるのではないかと思います。

ジェラール作「アモルとプシュケ」

こちらもルーヴル美術館の所蔵作品です。ヴィーナスの嫉妬を買ってしまうほどの美貌の持ち主であるプシュケ(人間)と、女神の息子アモル(クピド)の恋がテーマです。


この作品は、パリでも人気があるようで、ルーヴル併設のミュージアムショップでも関連商品をたくさん見かけます。ジェラール作品の中では、おそらく 「アモルとプシュケ」の方が有名だと思います。しかし、「ダフニスとクロエ」も負けず劣らず美しい作品なので、ルーヴルに行ったら、ぜひこちらもじっくり見ていただきたいと思います。


ダフニスとクロエ



「ダフニスとクロエ」を題材にした他の芸術作品

ラヴェルのバレエ音楽

おそらく「ダフニスとクロエ」を題材とした芸術作品の中で、最も広く知られているのは、モーリス・ラヴェルのバレエ音楽ではないでしょうか。
街の小さなCDショップでも、クラッシックのラヴェルのコーナーに行けば、バレエ音楽「ダフニスとクロエ」を見つけることができるはずです。「ダフニスとクロエと言ったら、ラヴェル」というのが、一般的な認識かもしれません。


シャガールの絵本挿絵

20世紀の画家 マルク・シャガールは、この物語の絵本の挿絵を描いています。
恋人たち、純粋な愛情、牧歌的な背景など、「ダフニスとクロエ」に含まれる要素は、シャガールの持つ世界観によく合っているように思います。
どのような経緯があったのかは知らなくても「ダフニスとクロエの挿絵をシャガールが描いた」と聞くと、「あぁシャガールってこういうの好きそうだもんね〜」と、妙に納得してしまう感じです。

ダフニスとクロエ ダフニスとクロエ ダフニスとクロエ
シャガールの挿絵本。「絵本」と称されますが、内容的に子ども向けではありません。
この本では、ページは150ページ、文字数も多く、読むにはある程度 時間がかかります。
現在、本屋さんで見つけるのは難しいと思います。アマゾンではいくつか出てきます(ない時もあります)。
Amazon「ダフニスとクロエ」普及版シャガール絵



オペラ座の天井画にもシャガールの「ダフニスとクロエ」

オペラ座の天井画シャガールのダフニスとクロエシャガールのダフニスとクロエ

シャガールは、もうひとつ、オペラ座に設置されている天井画でも、モチーフのひとつとして、「ダフニスとクロエ」を描いています。


オペラ座の天井画には、題材として14のオペラやバレエ作品が描かれています。そのうちのひとつとして、「ダフニスとクロエ」も取り上げられています。ここでは、ロンゴスの原作そのものというより、ラヴェルのバレエ作品としての「ダフニスとクロエ」ということになるでしょう。


天井画はとても大きく複雑な構成なので、ぱっと見上げただけでは、どの部分が何の場面なのかは分かりません。双眼鏡を使って、よく見ていると分かってきます。それぞれの場面の下の方に、作曲者名やタイトルの記入もありますし、それらしき登場人物やアイテムが認識できるからです。

「ダフニスとクロエ」は、全体を時計に見立てていうと、9時のあたりに位置する部分です。拡大してみると、ギリシアの神殿や、海(エーゲ海なのでしょうね…)に浮かぶヨット、何頭かの羊が描かれています。


エッフェル塔や、凱旋門、正面から見たオペラ座など、パリの象徴的な建造物が登場したり、シャガールらしく、羽根を持った正体不明の生き物や抱き合う恋人同士が、宙を飛んでいたりします。


この天井画が完成したのは1964年。意外と最近です。
シャガールは78歳でした。シャガールってすごいな~、とただただ感激しますし、見れば見るほど惹き込まれていく絵です。


天井画全体として、「夢の花束/La bouquet de reve」という作品タイトルになっています。一瞬、ありがちなタイトルに思えるかもしれませんが、でも、作品の雰囲気にあった、とてもステキなタイトルだと思います。

*関連する記事
絵のはなし シャガール「夢の花束」 
パリの見どころ「オペラ・ガルニエ」



ミレーも描いていた!しかも上野にある!「ダフニスとクロエ」

 

ミレーの作品

ミレーとは、「晩鐘」や「落穂拾い」を描いた、あの、ジャン・フランソワ・ミレーです。
なんとなくミレーの絵って、茶色っぽくて、地味なイメージ(失礼!)があるのですが、このようなテーマで、こんな色調の作品もあったのですね。

 

ミレーの「ダフニスとクロエ」は、東京上野の国立西洋美術館の所蔵作品です。西洋美術館に何か企画展を見に行ったら、常設展の方にも行ってみると見られるはずです。常設展なので、写真撮影(フラッシュ無し)もOKです。


ミレーのダフニスとクロエ

ミレーの作品ダフニスがヒナの巣を抱え、クロエがエサを食べさせようとしています。

最後にダメ押し!三島由紀夫までも!

三島由紀夫の小説に「潮騒」という作品があります。何度か映画化もされています。

他の三島作品と若干傾向が違うこの物語は、「ダフニスとクロエ」に着想を得たものだそうです。これは、研究者等が後になって指摘したことではなく、三島由紀夫本人がそう語っています。

三浦友和がダフニスで、百恵さんがクロエってことですね。


調べれば、まだまだ「ダフニスとクロエ」の関連作品が見つかりそうです。作者のギリシャ人・ロンゴスも、いまだに人々の間で語り継がれているのを知ったら、驚くのではないでしょうか。

色々ある中でも、私はやはり、ルーヴルにあるジェラールの「ダフニスとクロエ」が気に入っています。


ジェラールの属していた「新古典主義」と括られる画家達は、その後に台頭してきたロマン派〜印象派の流れが勢いを伸ばしたのと相反して、時代の影に消えて行きました。古い体質の絵画と見なされるようになったからなのですが、近年、その描写力や表現力は見直される傾向にあります。

しかし、そんな事情があってもなくても、見てキレイだと感じる、好きになるにはそれだけで充分だと思います。

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