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オルセー美術館にて (一人旅同士で写真を撮る)
たくさんの人が行き来していたはずなのに、思い出そうとするといつも、なぜか静かな場所だったような記憶がよみがえる。
パリにたくさんある美術館の中で、どこかひとつだけお気に入りを挙げるとしたら、私はオルセー美術館を選ぶと思う。
私にとってオルセー美術館は、誰かに「まぁ、ゆっくりしていきなよ」とでも言われているかのような心持ちで、のんびりと過ごせる場所である。
ある日の午後。
館内をぐるぐる歩いたあと、この美術館の象徴である大時計を正面にして、しばらく留まっていた。
手すりにもたれて人の行き来をぼんやり眺めていると、イタリア人女性が話しかけてきた。
はちきれそうなピンクのタンクトップ姿は、色っぽいというより、たくましい感じである。
手には、素人目にも高価と分かるカメラを持っていた。写真が趣味のようだ。
「あなたの言葉は英語? フランス語? それともイタリア語かしら?」
「いいえ、日本語よ。」
「日本語? そりゃあ 私には無理だわ(笑)」
私と彼女はお互いに、不完全な英語と不完全なフランス語の混ざった言語を使って会話をした。
しかしそれでも私たちは、必要な意志の疎通を図ることができた。
彼女は、大時計を背景にした自分の写真を欲しがっていた。
時計は自分のどっち側だとか、全身は写らなくてもいいとか、写真好きの彼女にはいろいろと希望があった。
必要な設定を行ったあとで、彼女は私にカメラを渡した。
たくさんの機能を備えた重いカメラだったが、私はただシャッターを押すだけで良かった。
お返しに彼女も、私のカメラを使って 私を撮ってくれた。
シャッターを押したあと、彼女は液晶画面を確認しながら「よーし、OK!」という顔をした。
イタリア人のイメージ通り、表情の豊かな女のコだった。
最後に私たちは、お別れの挨拶をした。
「ありがとう、良い一日を!」
「さようなら、良い旅を!」
最後のこの挨拶だけは、二人ともきちんとしたフランス語で交わすことが出来た。
私たちは思わず同時に笑ってしまった。
「この大時計の写真は、日本人女性に撮ってもらったの。」
撮影旅行を終えてイタリアに帰った彼女は、私が撮った写真を見せながら、誰かにきっとそう言ったはずである。
← イタリア人の彼女に取ってもらった写真。(公開用にボカしました。写真好きの彼女の名誉のために付け加えますが、本来のデータではくっきり写っています。)
以前は誰かに自分の写真を撮ってもらいたい時、日本人を探して声をかけていたのだが、この出来事以降は、写真が好きそうな人(大きなカメラを持っていたり、熱心に撮影している人)にお願いすることにした。上手に撮ってもらえる確率UP!
相手がフランス人とは限らないので、言葉は臨機応変に。みんなが写真を撮っているような観光スポットなら、日本語でも「お願いします」と言いながらカメラを渡せば、たいてい意志は通じる。
ただし、親切を装ってデジカメを持って逃げてしまうという犯罪もあるので、注意も必要。
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