HOME > シャルトル トップ > シャルトル訪問記 前編
スポンサード リンク
シャルトル訪問記(前編)駅からの道のり・ノートルダム大聖堂の外観
シャルトルは、西南約90kmに位置する静かな街です。12世紀のゴシック建築の大聖堂(ユネスコ世界遺産)と、情緒ある古い街並で知られてます。
初期フランスゴシック建築の大聖堂は、フランスで最も重要な建築物の一つとされています。
一般的に「シャルトル大聖堂」と呼ばれていますが、正式名称は「ノートルダム大聖堂」です。
ノートルダム(Notre Dame)とは、直訳すれば「我らの婦人」、つまり聖母マリアを意味します。パリの中心部にあるノートルダム大聖堂と同じく、聖母マリアを祀った聖堂です。
聖母マリアが生前身に着けていたヴェールがシャルトルに保管されていたという理由から、マリア崇拝の中心となり、巡礼地に指定されました。現在も、ヨーロッパ中から信者が巡礼に訪れています。
「シャルトル・ブルー」と呼ばれる深い青色が特徴的なステンドグラスも非常に有名です。
シャルトル駅からシャルトル大聖堂まで
パリからシャルトルまでは、フランス国鉄(SNCF)でおおよそ1時間ほどです。乗り換えもなく、比較的簡単に来ることができます。
駅から大聖堂までは、徒歩で15分ほどです。
駅前のローターリーを抜けて、目の前に進む道を真っすぐ進みます。左手に広場が出てくるあたりから、聖堂の塔が見え隠れしてきますので、それを目指して行くと大聖堂に辿り着きます。
おみやげ屋さんやカフェ、住宅の並ぶ、ごく普通の通りを進んで行きます。
パリの主要ガイドブックを確認したところ、ほとんどのガイドブックにシャルトルのページがあり、シャルトル駅から大聖堂までの地図が載っています。しかし、どれも詳しい地図ではありません。
おおまかな方向は分かるのですが、はっきりとした道順までは分かりません。
個人で行く人、特に方向感覚に自信のない人は、グーグルマップなどで、地図を用意して行きましょう。
最初に歩き出す方角さえ間違えなければ、迷わず行けると思います。
グーグルマップ→シャルトル駅から大聖堂までの行き方
*青い線でルートを入れましたが、この道順は一例です。「A」地点が駅で「B」地点が大聖堂です。
大聖堂の手前まで来ると、観光案内所(Office de Tourisme)があります。ここで街の案内図(無料)をもらえます。必ずもらいましょう。
「地図をください」
Un plan , s’il vous plait / アン プラン スィル ヴ プレ
この案内所が駅前にあればいいのに…と思う私です。
ここに来るまでが、けっこう歩くのですよ。
方向音痴の管理人より、同じく方向音痴のあなたへ もう一言アドバイス
「徒歩15分」というのは、方向音痴の人にとっては、けっこう危険な距離です。グーグルマップは、途中の建物の省略などもありますので、注意してください。
個人で行く人で、方向感覚に自信のない人は、万全の準備が必要です。まず、出発地点と目的地の両方が入る縮尺でプリントします。さらに、地図を最大限に拡大して、目的地までを数枚に分けて印刷します。なおかつ、ストリートビューで街の様子(曲がり角などポイントになる所)を見ておきます。ここまで予習すれば、辿り着けるはず。
それでも不安な人は、ツアーを利用しましょう。
シャルトル大聖堂の外観
駅からの道のりでは、見えたり隠れたりしていた大聖堂が、ある地点でいきなり全容を現します。
まずは、建物の外側から眺めましょう。
シャルトル大聖堂の大きな特徴の一つが、左右非対称の塔です。高さも装飾様式も違う塔を持つ、珍しい聖堂です。
向かって右:旧鐘楼 1145〜1170年建立 ロマネスク様式
向かって左:新鐘楼 16世紀に再建 ゴシック様式
大聖堂は、1194年の大火災をはじめ、何度かの火災・修復を繰り返して現在に至ります。
この写真で見えているのが西側正面、12世紀ごろ造られた、現存する最も古い部分です。
扉口は、3つのポルタイユ(門)から成っていて、それぞれに違う彫刻が施されています。ロマネスク時代の最高峰でありながら、初期ゴシック建築の特徴がすでにあらわれています。
大聖堂の南側や北側にまわると、西側よりも若干新しいので、彫刻群にも違いが見られます。ロマネスク〜ゴシックへ移行する変化を見ることが出来る点で、シャルトル大聖堂は興味深い建築です。
では西側扉を拡大して見てみましょう。
シャルトル大聖堂の西側正面
聖堂の西側が正面になります。フランスにある大聖堂は、シャルトルに限らず、基本的に西側がメインの入口です。聖堂内の主要部分である内陣を聖地(つまり東の方向)へ向けるためです。
一番上の、花火のような形をしているのが、「バラ窓」、その下の半円と長方形を足した形をしているのが、「長窓」です。
バラ窓も長窓も、外柄から見ると黒く塗りつぶされたようになっています。これが、ステンドグラス(の外側)です。
ステンドグラスは、建物内部を豊かな光で満たす装置ですが、外から見ると、黒い板面です。
扉口の上の彫刻
長窓の下に並ぶ、3つの扉口の上にある彫刻を拡大します。
扉の上部(開口部)を飾る半円アーチを中心に二重、三重にせり出すアーチヴォルト(飾りせりぶち)扉中央の基柱、扉の側面に張り出す円柱列などに、彫刻が体系的に施されています。
単体の彫刻作品と違い、建築物に付随する彫刻には、制約がつきものです。この場合、おのずと放射状の構図となり、人物の比率も自然とそこにおさまるような形にならざるを得ません。
人物は4頭身くらいに見えます。おそらくそのせいで、テーマはキリスト教の教義であるにも関わらず、 厳格で荘厳な印象よりも、むしろ、愛らしさやユーモラスな雰囲気が強く感じられます。
扉口 右上部「荘厳の聖母子」
扉口 中央上部「栄光のキリスト」
中央扉は、左右と比べて少し横幅が広くなっています。張り出し部分のアーチも一つ層が多いです。
扉口 左上部「キリストの昇天」
円柱(人像柱)
門の左右の部分には、人像柱(円柱と一体になった彫像)が並んでいます。鼻先や足が欠けてしまっているものもありますが、全体としてはしっかりと残っています。シャルトル西側の人像柱は、まだ円柱という建築の一部です。しかし、完全な円柱ではなく、ロマネスクからの脱却の兆しが見られます。
この人柱像は、キリストの祖先にあたるユダヤの王達(ソロモン、ダヴィデなど)を表現しています。
聖堂の南翼側にまわってみます。扉までの奥行きが増し、建築空間としても深さが感じられます。
そして、西側との違いが分かりやすいのが、人像柱の彫刻としての表現です。注目してみましょう。
西正面で見た人像柱より、ぐっと立体的になっています。
頭部は思い思いの方向を向き、手の動きが自由になっています。それによって、感情が豊かに表現されるようになりました。
先に見たロマネスク時代からの移行期の西側門では、聖人像はあくまでも円柱に施した彫刻でした。ここでは、円柱であることをやめてしまったように見えます。
パリのノートルダムの人像柱と比べてみよう
比較のために、パリの写真を掲載します。
パリのノートルダム大聖堂の正面に並ぶ人像柱です。
時代的には、ほんの少しパリのノートルダムの方が後になります。
比べてみてください。
とても優雅です。
真下から眺めると、今にも聖人達が降りてきそう。話しかけられているみたいな臨場感です。
壁に張り付いている印象は全くなくなりました。彼らを見て、円柱だと思う人はいないでしょう。
パリのノートルダム大聖堂は「フランス・ゴシック建築の最高峰」と言われます。
ガイドツアーに参加すると、おそらくガイドさんもそのように説明すると思います。
パリのノートルダムの写真を見た後で、シャルトル西側の直立不動のような人像柱を改めて見返すと、とても素朴な印象を受けます。
逆に、パリのノートルダムを見て、それがどのように素晴らしいのかよく分からないとしても、時代を追って比較すると、表現の洗練度が増していることが、感覚として理解できるのではないでしょうか。
パリのノートルダムがなぜ最高峰と言われるのか、それには幾つもの要因がありますが、その答えの一部がここにもあると言えます。
なぜ、大聖堂の外側に、これほどまでに凝った装飾が施されているのか。
何で読んだのか、誰に教わったのかは忘れてしまいましたが、「教会の中に入らなくても祈りを捧げることができるように」というのが、理由の一つと聞いたことがあります。
昔は(今もかな?)、貧しさゆえに身なりも充分に整えることができず、教会の中に入ることさえ憚られる人がいたので、建物の外観にも聖人像や聖書の教えが分かるような彫刻を施した、ということです。
わざわざシャルトル大聖堂を観に行こうと考える人ならば、必ずパリのノートルダム大聖堂も見学することと思います。一例として人像柱を取り上げましたが、比較例は他にも見つかります。「比較してみよう」という気持ちを持つことで、漠然と眺めることがなくなり、一層充実した観光になると思います。
シャルトルに行った際には、西正面と、南口、北口の違いや、各入口の外側の彫刻群もじっくり見て来てください!
次のページ(後編)では、大聖堂の内部と古都シャルトルの街の様子をご紹介します。
おすすめの記事
「シャルトル」「モンサンミッシェル」「ジベルニー」「ヴェルサイユ宮殿」「パリ市内の主要スポット」など、人気を観光地を制覇。エールフランス航空直行便利用。☆JTBの人気ツアーです。
▲このページの上部に戻る