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「貴婦人と一角獣」展 国立新美術館(2013.4.24〜)を観て


国立新美術館フランス国立「クリュニー中世美術館」から、15世紀のタピスリー「貴婦人と一角獣」の6張全てが貸し出されると聞いて、半年前から楽しみにしていました。

 

会期の2日目(4/25)に、観に行ってきました。
場所は、東京 六本木「国立新美術館」2Fの展示室です。
入場料は当日券で大人1500円です。


「貴婦人と一角獣展」6枚すべてが日本で公開

パリの中世美術館の改装にともない、2013年にはこの作品が日本で公開されました。

(東京:国立新美術館 4月24日〜7月15日 / 大阪:国立国際美術館 7月27日〜10月20日)
展覧会 公式サイト 『貴婦人と一角獣』」展 |2013年 フランスの至宝、奇跡の初来日!        




6帳のタピスリーの展示

本来の所蔵美術館であるフランス パリの「クリュニー中世美術館」では、照度をかなり落とした暗い部屋に展示されています。今回の国立新美術館の展覧会会場では、それほど暗くはなく、タピスリー本来の色味を認識できるくらいの明るさがありました(それでも暗めではありますが…)。

展示室は広く、1枚づつ余裕をもって、ゆったりと展示されています。展示室の入口付近に立つと、6枚全てを一度に見渡せるように並べられていました。この点でも、中世美術館で観るより、ずっと見やすい展示方法になっていると思いました。(展示室内は撮影ができないので、写真はないです…。)


入口を入って順路手前から、タピスリーは「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」「我が唯一の望み」の順に並べられています。

人間の五感は、中世的な価値観に於いては、序列がありました。本能・肉体の欲求により近いものから、精神的な働きに近いものへの順に高くなると考えられており、タピスリーの並べ順はその基準に基づいています。
最後に来る「我が唯一の望み」は、五感のさらなる高みに位置づけられています。


中世美術館の展示室左写真は、かつてパリの中世美術館にて撮影したものです。
中世美術館では、小さな部屋に5感を示す5枚がぴったりと隣り合わせに並び、背中側に「我が唯一の望み」が展示されていました。

照明は、作品にはスポットが当たっているものの、部屋自体はかなり暗く「真っ暗」といっても良いくらいでした。

*参考記事:「クリュニー中世美術館」「貴婦人と一角獣」



タピスリーに関して

音声ガイドを借りて、解説を聞きながら1枚づつしっかり観察しました。
以前にパリの中世美術館で見学したときには気付かなかった細かい部分にも、着目することができました。


* * *

音声ガイドの解説によると、6枚目のタピスリー「我が唯一の望み」の解釈については、2つの見解が示されていました。
中世的な思想の観点から、五感のさらなる高みを表現する第六感を、自己を抑制する意志であるとするなら「装身具を外し、宝石箱にしまおうところ」。
タピスリーの存在そのものに、恋愛に関するものであることを示唆する要素が見られることから、第六感を「心」と捉えるなら、「装身具を身につけようとしているところ」。
外したところなのか、着けるところなのか。やはりどちらかに確定することはできないようです。

* * *

私は、6枚の中で「我が唯一の望み」だけサイズが大きく、あとは同じ大きさだと思っていたのですが、改めて部屋全体を見渡して比べてみると、実際は6枚とも微妙にサイズが異なっていることが分かりました。特に「味覚」はかなり横幅が大きく、「我が唯一の望み」と比べてもあまり変わらないのだと気付きました。



* * *

貴婦人6枚貴婦人の衣装や髪型は、当時の流行が反映されたデザインになっていて、それぞれ趣向が凝らされています。(左写真は、館内で購入した図録のページを撮影したものです)

髪型だけでなく、顔立ちも違うように見えるので、私は違う人物が描かれているのだと思っていました。特に、「視覚」の貴婦人は、ほうれい線と目の下のくぼみが目立つので年配の女性に見え、「聴覚」の貴婦人は、アゴのラインが引き締まって若々しく見えます。

音声ガイドの解説の中では、それぞれ違った衣装を身につけているが6枚の絵に登場している婦人は同じ女性だという説明がありました。

一方、図録に掲載されているクリュニーの館長の寄稿文によると「全くの同一人物というわけでも、全くの別人というわけでもなく……」という記述があります。


古いものなので、よく分からないことも多いですし、そもそも貴婦人が誰なのか、ということ自体があまり重要視されていないのかもしれません。


タピスリー以外の展示品は

6枚のタピスリーをじっくり観たあとは、高彩度の映像コーナーへ。本物のタピスリーが展示されているのに、映像でも観せるとは、どんな内容だろう?と思いながら、大画面の前の空いているベンチに座りました。

6枚それぞれの衣装、貴婦人、侍女、一角獣、小動物といったテーマにスポットをあてて、部分的に拡大して比較しながら見せる内容のものでした。漠然と見過ごしてしまいそうな部分に改めて注目することができました。

このコーナーの映像を観て、興味を引かれた点について確認するために、再びタピスリーの展示室に戻りました。

実際の展示では、照度を落としていることや、サイズが大きいために下から見上げていることによって、分かりにくかった部分も、解像度の高い映像で観ることによって、細部まではっきり判りました。


うさぎのページ映像コーナーの次は、タピスリーに描かれた、動物や植物に関する考察のコーナーです。うさぎ、キツネ、鳥、植物などが、それぞれピックアップされて整然と並ぶ様には圧倒されました。

展示会図録にもその内容と同じページがあります。よく見ると、小動物は同じポーズだったり、あるポーズの反転のデザインだったりします。起こしたデザインを効率よく再利用していることが伺えます。

またこのコーナーには、キリスト教と一角獣の関係、宗教的背景についての解説などもあり、非常に興味深かったです。

その展示室から出ると、次は長く伸びる回廊のような展示室になります。
聖女バルバラやマグダラのマリアの彫像などに続き、当時の衣装や装身具などを鑑賞できます。

司祭が儀式の時に着用する衣装、当時の流行にのっとった指輪や装飾的なベルトなど、古くて美しい品々。当時のゴブラン織りの布地の一部などもありました。他にも、縦型紋章の例、他の同時代のタピスリーなどが続きます。

解説では、布地に関すること、タピスリー登場する紋章の謎、デザインを行った人物についてなどの説明がありました。そこにある展示品そのものの解説に留まらず、タピスリー「貴婦人と一角獣」の中ではどんなアクセサリーを着けている、貴婦人の衣装にはこんな特徴がある、などのように、常にタピスリーと絡めた解説になっていて、最後まで興味を持って聞くことができました。

 

そして、それらの説明を聞いて、もう一度最後にタピスリーを観たいな、と思ったら、「もう一度見たい方はこちらからお入りください」という入口があり、再び最初の展示室に戻ることができました。
鑑賞者の立場になった構成になっていることに感激しました。


出口の手前には再び映像コーナーが設けられていました。ここでは、12分ほどのNHKの映像(日曜美術館風だと思いました)が流れています。タピスリーが発見された貴族の館の内部が紹介されていたり、タピスリーの注文主についてや、タピスリーの下絵を描いた人物は、サントシャペル教会のバラ窓のステンドグラスのデザインに関わった人物と同じであることなどが、紹介されていました。


この映像も、総まとめとして面白いので、時間があれば観てきた方が良いでしょう(テレビで放映するかもしれませんが)。


展覧会後のお楽しみ…ショップでは

図録展覧会図録は2,000円。読み物として文章が非常に読みやすく、楽しめます。
私は、展覧会に行ったら、必ず図録を買うことにしていますが、外国の文献の翻訳のような、読みにくいものがしばしばある中で、この図録は一般の人にも分かりやすく編集されていると思いました。

また、タピスリーの全体像や部分の拡大が、布地の質感まで分かるような解像度で掲載されていて、とても見応えがあります。この内容で「価格2,000円」は、お得感があります。



表紙には「聴覚」、裏返すと「視覚」がデザインされていて、背表紙をめくると、赤一色の濃淡で「我が唯一の望み」が印刷されています。

この展覧会は、ポスターや駅看板の告知、チケット半券には「The lady and the Unicorn」と英語でサブタイトルがついているのですが、図録の表紙には「La Dame à la licorne」とフランス語表記になっているのが印象的です。裏側は日本語タイトルです。



図録表紙 図録裏表紙 図録


館内ポスター他には、ミュージアムショップで定番の、絵はがき、クリアファイル、しおり、一筆箋、ハンカチ、Tシャツなどがひと通り。
フランスのお菓子(マカロンやチョコレートやクッキー)、ゲランの塩、塩キャラメルなど、フランスの一般的なお土産品があるのも、フランス美術の展覧会ではよく見かける光景です。

今回の展示ならでは商品としては、ユニコーンのぬいぐるみ、貴婦人の柄のクッションカバーや、千花文様のバック、ポーチなどがあって魅力的でした。



貴婦人と一角獣展 まとめ

ひと休み展示数としては、他の一般的な美術展と比較して、そう多い方ではないですが、何度も繰り返し、タピスリーを見に戻ったせいか、けっこう疲れました。


最後に一回のカフェコーナーでひと休みしてから帰路につきました。



全体を通して、人々に作品をよく知って欲しい、楽しんで欲しいという主催者側の思いや、タピスリー「貴婦人と一角獣」に対する愛情を感じた展覧会でした。とても楽しい時間を過ごせました。



会期2日目、平日の午後であるにも関わらず、大勢の人が観に来ていましたが、混雑で動けないというほどではなく、ゆっくり鑑賞できました。これから、会期が進むに連れて、どんどん混雑が激しくなっていくと思います。観に行くつもりの方は、できるだけ早めに行った方が良さそうです。



「貴婦人と一角獣」豆知識
人気映画「ハリー・ポッター」シリーズで、ハリーが学ぶ魔法学校の寮の一室には、この「貴婦人と一角獣」がかかっています。

「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」の作品中でも(私はガンダムは見ていないのですが…)、タピスリー「貴婦人と一角獣」が物語全体の重要なモチーフとなっているそうです。

19世紀 フランスの画家「ギュスターヴ・モロー」が、このタピスリーを大変気に入っていたことは、モローファンの間ではよく知られています。パリのモロー美術館に行くと、このタピスリーからインスピレーションを受けたと思われる作品をいくつか見ることができます。参考記事: ギュスターヴ・モロー美術館




*関連する記事:パリの美術館「クリュニー中世美術館」  /  絵のはなし「貴婦人と一角獣」


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