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クロード・モネ「日傘の女」

直射日光がじりじりと照りつける日本の夏。「日傘」を夏の必需品とする女性は、日本では珍しくありません。

一方パリでは、真夏でも日傘をさす人を見かける機会はほとんどありません。ヨーロッパの夏は短く、太陽の光が降り注ぐ明るい季節は、私たち日本人が想像する以上に、彼らにとって貴重な期間であるようです。 せっかく現れてくれた太陽を避けるような「日傘をさす」という行為は、理解できないことなのかもしれません。

そんなことを考えながら、「郷に入りては」の言葉どおり、パリ滞在中は私も日傘なしで歩き回るのですが、パリにも日傘の愛用者がいることを思い出しました。

ワシントン版

クロード・モネ「日傘の女」

モネが描いた 日傘をさす女性の絵は、3枚あるとされています。3枚のうち、後方に息子ジャンも描かれているこの作品は、パリでは見ることができません。 所蔵されているのは、ワシントン・ナショナル・ギャラリー。愛妻カミーユをモデルに描かれました。

(*2011年6月8日〜9月5日 六本木の国立新美術館で「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」を開催していました。パリでは見られないワシントン版の「日傘の女」を鑑賞しました。→管理人ブログ(ブログ記事/ワシントン・ナショナル・ギャラリー展にて・日傘の女


オルセー美術館に所蔵されているモネの別の作品「ひなげし」でも、カミーユは日傘をさしています。彼女は日常的に日傘を使っていたのでしょうか。(参考記事→モネ「ひなげし」


3枚の「日傘の女」のうち、残りの2枚はオルセ−美術館にあります。こちらは、若くして亡くなったカミーユの死後6年経ってから描かれました。



オルセー版
この時は、義理の娘(再婚相手の子)がモデルをつとめたのですが、カミーユの面影を追っていたモネは、モデルの顔を描くことができませんでした。逆光と風で顔はよく見えない、という感じに描かれています。先に制作したワシントン版では、この2枚よりも幾分、目鼻立ちが分かるように描かれています。


この作品に限りませんが、モネの作品では、人物が描かれいても「モデルその人」として表現しているのではなく、風景の一部分として描写するという傾向が強くなっていきます。


コサージュあとから描かれた「日傘の女」でも同様で、「モデルの表情が、ほとんど分からないのは、風景の一部として捉えていたから」とするのが、一般的な解釈と言えます。


けれど、モデルの腰にある、カミーユへの思いを表すかのような「ひなげし」のコサージュを見ると、顔は描かなかったというよりも、描きたくなかった、あるいは描けなかったという気持ちもあったのではないか、と私は感じます。


これ以後、モネは人物画をほとんど描いていません。「人物画のルノワール、風景画のモネ」という表現もあるほどです。

モネが風景画を中心に制作した背景には、「筆触分割」という印象派の中心となる技法が、風景の描写に特に適していたからだと考えられます。でも実は、気持ちの問題もどこかで関係していたように思えてなりません。


最初の妻、カミーユの死から6年。何を思いながら、モネはこの2枚を描いたのでしょうか。





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