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絵画の大きさが語ること



ルーヴル美術館ドゥノン翼




初めてルーヴル美術館に行って、「ナポレオン一世の戴冠式」を見たときの感激を、私は今でも鮮明に覚えている。

 

世界史の教科書で見知っているその絵が、非常に大きな作品であるという知識は持ち合わせていた。

しかし、実際に見てみると、その大きさは私の予想を遥かに上回るものだった。遠くから見つけて、
「あ、あの絵だ!こんなに大きかったんだ……。」としばし呆然としたのを覚えている。

 

 

他にもルーヴルには、「メデュース号の筏」「民衆を導く自由の女神」など、どんな絵なのか、画像としては知っているものの、実物は初めて観る作品がいくつもあった。
どれも実物の大きさに圧倒された。



現代に生きる私たちは、印刷技術に発達によって、発色の良い出版物を当たり前のように目にしている。出版物だけでなく、インターネットや、タブレット端末などによっても、鮮やかな色彩に慣れてしまっている私たちが、絵画作品を見たときに、「色」で驚かされることは少ないように思う。

 

しかし、「大きさは違うのだ」とその時に感じた。
「大きさ」は数字で知っていても、その場で体感するしかないものだ。

絵画は、大きくても小さくても、サイズそのものが作品の一部であり、メッセージを含んでいる。
どれだけ色の再現性が正確でも、数センチ角に縮小された画像では、分かり得ないものがある。

 

 

「美術館に行かなくても、絵を見ることはできる。ネットでも、画集でも。」

そう言われることがある。

 

確かに美術館に行かずとも、画像として作品を認識することはできる。

でも、作者のメッセージを体感するには、絵の前に行ってみるしかない。

私はそう思っている。



ルーヴル美術館の大きな絵

ナポレオン一世の戴冠式

「ナポレオン一世の戴冠式」1805-1807
Couronnement de l'Emoereur et de l'Imperatrice

作者ダヴィッドが皇帝ナポレオンの栄光を歴史に刻もうとした大作。総勢190名を超える人物が等身大で描かれている。

 

作品の大きさは、縦6.3m 横9.7m。
平米数にすると、約61㎡。
私が住んでいる部屋の床面積を上回る。

 

*関連する記事:絵のはなし「ナポレオン一世の戴冠式」

 

カナの婚礼

「カナの婚礼」Les Noces de Cana 1562-1563
ヴェロネーゼ作

ルーヴルで最も大きな作品は、実は「ナポレオン一世の戴冠式」ではなく、「カナの婚礼」である。
縦6.66m、横9.9m。平米数になおすと66㎡。
キリストが起こした奇跡の場面を描いた宗教画で、モナリザの正面に展示されている。



*関連する記事:絵のはなし「カナの婚礼」
 

メデュース号の筏

メデュース号の筏 (Le radeau de la Méduse)1818-1819
ジェリコー作

上の2つに比べると、4.91×7.16cmと、だいぶ小さい。それでも、絵の前にいる人との比率を見てもらうと「かなり大きそうだ」ということは分かっていただけると思う。

この頃は、大画面に描くのは、歴史か神話がテーマという暗黙の了解があった時代。しかしこの絵は、当時実際に起こった海難事故を、神話のような壮大さで描いたことで、注目を集めた。
*関連する記事:絵のはなし「メデュース号の筏」


民衆を導く自由の女神

「民衆を導く自由の女神」La Liberté guidant le peuple
ドラクロワ作 1830


こちらも有名作品。2.59 × 3.25m

実物を見ると「あー!これ知ってるー!」と思うはず。

ちなみにテーマは「フランス革命」ではなく「7月革命」。

 

 

 

マリー・ド・メディシスの生涯

マリー・ド・メディシスの生涯 Vie de Marie de Médicis
ルーベンス 1621-1625

アンリ4世のお妃として、イタリア名門メディチ家から嫁いできたマリーの半生を描いた作品。全24枚の連作。
あまり功績のなかったお妃で、しかも生存中に本人からの依頼で制作が始まった。
一枚づつでも相当大きい作品なのだが、これでもか、これでもかと続く。それもルーベンスの、こってりした筆致で。この部屋全部がひとつの作品。

*関連記事:絵のはなし「マリー・ド・メディシスの生涯」

 

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