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フライトは12時間
成田からパリまでは、直行便でも12時間〜12時間半かかる。
「12時間も飛行機に乗るなんて!」「よく耐えられるねー。」「12時間もかけて行くほど何がそんなに面白いの?」
会社員時代、短い夏休みの度にパリに行く私に、周囲の人はそう言った。
現地での滞在時間に対して、往復の移動時間の割合が大きく、もったいないという思いは多少あった。
しかし、「耐えている意識」はひとかけらもなかった。
たしかに、12時間というのは短い時間ではないけれど、現地へ行きたい気持ちの方が優先するので、出かける際に フライトのことはほとんど考えていない。
では、12時間かけて日本へ戻る際はどうかというと、帰りは疲れて寝ているので問題ない。
ある年の帰りの便は、23:25 シャルル・ド・ゴール発の便だった。21:00頃空港に着けばよかったので、最終日も夕方まで目いっぱい遊んで、飛行機に乗り込んだ時にはすっかり疲れ果てていた。
3列席の一番窓際の席に身をしずめ、毛布を縦に折って、肩から膝下まですっぽり覆い、その上からベルトを締め、そして隣りの2つの席がハネムーナーであることを確認した記憶を最後に、眠りに落ちた。
離陸した瞬間も知らず、目が覚めたら、1回目の食事の時間になっていた。
客室乗務員さんは、私が搭乗直後から爆睡していたのを知っていたのだろう。お決まりの「魚ですか?チキンですか?」ではなく「お食事はどうされますか?」と微妙な聞き方をしてきた。
もちろん、いただきますとも。
隣りでは新婚さんが、それぞれにチキンとフィッシュを注文し、「こっちも食べてみる? ひとくち食べてもいいよ!」「 あ!食べ過ぎ!」などと楽しそうに戯れている。はいはい。戯れる相手がいない私は、さっさと食べ終えて、また眠った。
成田には17:45に着いた。
家に帰るとすぐ夜になったので、再び眠った。
夜が終わって、また夜が来るので、ヨーロッパ方面から戻って日常に復帰するのは比較的楽である。
本来の希望では、帰って来た翌日に一日休んでから出社するスケジュールにしたかったのだが、希望通りの予約がとれず、帰国翌日に会社へ行くことになっていた。
それはつらいのではないかと予想していたが、それほどでもなかった。
当時の私が受け持っていた仕事は月間ベースのものが殆どで、しかも一人で進める案件が中心だった。ひと月の中でどの日に何をやるかを自分で組み立てることがある程度可能だったので、 休み明けには、比較的単純でしかも軽めの作業を伴う仕事を用意しておいた。
何かを考えたり、データを作ったりする仕事は、やっているうちに頭が空白になって、パソコンに向かって鎮座している置物になってしまう恐れがあると思ったからである。
でも、そんなことまで考えなくても大丈夫だったかもしれないと思うくらい、休み明けもいつもと同じように仕事をした。いつもと同じ普通の一日だった。
帰りのフライト12時間で、空間を移動するとともに、意識もしっかり戻って来ていたようだ。
旅行を非日常的な夢のような時間に仕立て上げるためには、普通の日をたくさん積み重ねることが不可欠である。
だから、いつもと同じ普通の日である出社一日目は、「旅行が終わって残念な休み明け」などではなく、次の旅行のための第一歩なのである。
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