クリュニー中世美術館 Musée National du Moyen Age
古代ローマ浴場跡の遺跡に中世の美術品を集めた、パリでは異色の美術館です。
メトロのサン・ミッシェル駅で降りたら、サン・ミッシェル広場からセーヌ川を背に歩きます。周辺は、洋服、靴、アクセサリーなどたくさんのお店が並ぶ地域です。カフェやレストランも軒を連ねます。
また、学生が多く、教育機関や書店などもたくさんあります。
そんな賑やかな界隈に、いきなり古代の遺跡が現れます。
3世紀のローマ建築で、パリがローマの要塞都市だった頃の名残でもあります。よく知られているように、ローマ人は入浴好きだったため、必ずローマの遺跡には浴場跡が出てくるそうです。
この遺跡も同様で、これはセーヌ川の舟主たちの組合が作った公共浴場でした。 3世紀末に蛮族によって破壊されますが、14世紀にブルゴーニュの修道院院長「クリュニー」がこの地を買い取り、 修道僧のための建物が造られました。 フランス革命後に一旦、美術収集家の手に渡りましたが、その死後、収集品とともに 国家の所有となりました。
それが、現在の「クリュニー美術館」です。名称も、もともと買い取った修道院長の名前から来ています。
展示品は、宗教的モチーフを施した彫刻やレリーフ、家具や武具などの調度品、アクセサリーなどの工芸品などが中心です。
パリには大小たくさんの美術館がありますが、この美術館のように、中世およびそれ以前の古いものばかりを集めた美術館は、実は多くありません。
中世好きの人には、ルーヴルの中世コーナーと並んで、おすすめの美術館です。
クリュニー中世美術館/Musée National du Moyen Age
最寄り駅 メトロ4号線 St-Michel
メトロ10号線 Cluny La Sorbonne
RER B線・C線 St-Michel Notre-Dame
開館時間 9:15〜17:45 / 火曜日 1/1 5/1 12/25
URL https://www.musee-moyenage.fr/
中世美術館周辺のグーグルマップ
中世美術館 見学レポ
メトロのサン・ミシェル駅を降りたら、セーヌ川を背にして歩き出します。
ここは、サン・ミシェル広場にある噴水。広場には、まるで渋谷ハチ公前のように、待ち合わせらしき人々が大勢います。
写真左の噴水は、翼のあるドラゴン。右は大天使ミカエル。広場名にもなっている「サン・ミシェル」とは、「聖・ミカエル」の意味。
フランス語には、「通り」をあらわす単語が、いくつかあり、それぞれ、少しづつ意味合いが違います。
中世美術館が面する「サン・ミシェル大通り」には、通りを表す単語として「boulevard」が使われています。通りの名前からも、この辺りには昔城壁があったことがうかがえます。
パリは昔、厚い城壁に囲まれていました。人口の増加に伴い、拡大するために城壁を外側に移していき、移した城壁跡の土地に作られたのが、「boulevard」です。
🩷参考〜微妙に違う「通り」を意味する単語〜
- rue(リュ):両側に家並みのある通り(一番よく見かける)
- boulevard (ブールヴァール): 旧城壁跡に作られ並木があって環状になっている大通り
- avenue (アヴニュ):城館、広場など、名のある建造物に通じる並木道 (シャンゼリゼ大通りなど)
クリュニー中世美術館 入口
周りの喧噪にそぐわない、ひっそりとした雰囲気です。
美術館と気付かずに、通り過ぎてしまいそうになりますが、「貴婦人と一角獣」をデザインしたフラッグが目に入るので、ここが「クリュニー中世美術館」であると分かります。
館内には、24の展示室があり、彫刻、レリーフ、調度品、などを見ることができます。
以下で、特に心に残った展示品をいくつかご紹介します。
諸王の像
ノートルダム大聖堂の正面を飾る「諸王の像」。ユダヤとイスラエルの王様達です。
フランス革命時にフランス国王像と間違われ、落とされ破壊されてしまいました!
ノートルダム大聖堂の諸王のギャラリーは後に復元されましたが、ここにあるのがオリジナルの王様達です。
これは諸王の頭部。
ちなみに、ノートルダム大聖堂の諸王のギャラリーとは、左写真の黄色で示した部分です。
宗教建築物である大聖堂には、 外側からも教義が分かるような工夫が施されています。正面入口の上の部分には、旧約聖書に登場するユダヤとイスラエルの諸王の彫像28体が並んでいます。
キリストが生まれる以前のユダヤ王たちです。
これをフランス歴代の王の像と間違えて壊したという革命軍に驚きです。あり得ない、と思うのですが……。
とはいえ、日本人の私だって、京都や奈良の仏閣で、どの像が誰か分からない。それと一緒?
こちらは諸王の身体。残念な姿。
ノートルダム大聖堂では、かなり高い位置にあるので、実際の大きさなどがよく分からないのですが、ここでは間近で見ることが出来ます。
その点に関してだけは、良かったといえるのか?
興味深いもののひとつが、ステンドグラスです。
通常ステンドグラスは、教会などの建築物の高い部分に設置されているので、このように至近距離で見られる機会は多くありません。
葉の一枚一枚や、布の重なり部分など、遠くからでは分からないような細部にも、丁寧に装飾が施されていることが分かります。
カリグラフィ。
アルファベットのお習字とも言われる「カリグラフィ」。文字の装飾です。
習い事として日本でも人気があります。私も実は、カリグラフィでバースデーカードを作ったりするのが好きなので、これはじっくり観ました。
ここでは、ゴシック体で描かれた作品が可動式パネルに入っていました。中世から残る作品を観ることが出来て感激!
後ろの壁にかかっているのはタピスリーです。
これが絵画でもすごいと思うのですが 「織物」と聞くと、また違った感慨があります。
サイズはこんなにも大きいし、柄は単純な パターンではなく、細密に描かれた絵です。
この表現力は、いったい、どうやって?
宝飾品、装飾品、武具、なども見逃せません。
宝飾品は、衣類や食べ物のような生活必需品ではありませんが、人間にとっておそらく、なくてはならないものなのだろうと思います。
この時代の人々も、宝飾品を大事にしていたことが分かります。
単なる装飾のためだけでなく、儀式に使われるようなものや、権力を象徴するようなものまで、宝石を使った美術品がたくさんありました。
中世美術館の所蔵品の中で、タピスリー(タペストリー)「貴婦人と一角獣」が、見学のメインと言えると思います。
作品保護のために、照度を落とした薄暗い円形の部屋で、壁に沿うように展示されています。部屋の中央にはいくつかベンチがあり、座って鑑賞できるようになっています。
15世紀末にフランドル地方で織られたものと考えられています。
全部で6張のタピスリーから成るこの作品は、貴婦人とユニコーンとライオンが描かれています。6枚のうち、5枚は、視覚・聴覚などの五感がテーマに作成されていますが、残りの1枚が、何をあらわしているのかは、現在も謎とされています。
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