「ボッティチェリ」は、イタリアルネサンスを代表する画家の一人です。
絵画にあまり興味がないという方でも、ボッティチェリの代表作「ヴィーナスの誕生」や「ラ・プリマベーラ/春」は、どこかで目にしたことがあるのではないでしょうか。
【参考】ボッティチェリの代表作。 この2作品はいずれもフィレンツェにあります。
ボッティチェリは、生涯のほとんどをフィレンツェで過ごしました。
そのため、作品の多くはウフィッツィ美術館(フィレンツェ)に所蔵されていて、パリで見ることができるボッティチェリの作品は、そう多くはありません。
ルーヴル美術館で所蔵されているボッティチェリの作品は次の3点です。
- 三美神を伴うヴィーナスから贈り物を授かる若い婦人
- 学芸たちの集いに導かれる青年
- 聖母子と少年聖ヨハネ
このページで紹介しているのは、上記の 1. と 2. の作品です。
これら2点はいずれもフレスコ画です。
1873年、フィレンツエ郊外、メディチ家の遠縁にあたるトルナブオーニ家の所有していたレンミ荘という大邸宅で、フレスコが3点発見されました。そのうちの2点「三美神を伴うヴィーナスから贈り物を授かる若い婦人」と「 学芸たちの集いに導かれる青年」がルーヴルの所蔵となりました。
この2点も所々剥がれかかっていますが、残るひとつはさらに以上に損傷が激しくその場に残されました。
パリでボッティチェリを見ることが出来るというだけでも大変嬉しいことです。しかも、この2点はもともと壁画ですから、驚きでもあります。普通は、壁画や天井画は現地に行かなければ見られないものですから。
この作品は、「サモトラケのニケ」が展示されている階段踊り場の脇に入った展示室にあります。ニケの周りに集まった大勢の人がこの展示室に流れてくるのですが、ニケを写真におさめた満足感からか、この壁画はスルーしてしまう人が多いようです。
でもスルーしてはダメですよ!
ニケのところまで行ったなら、ボッティチェリも要チェックです!
「若い婦人に贈り物を捧げるヴィーナスと三美神」
作品保護のために、かなり照明が暗くなっていますが、お好きな方なら「あ、ボッティチェリだ!」とすぐに分かるくらい、いかにもボッティチェリっぽいフレスコ画です。
三美神に付き添われたヴィーナスが、花嫁が差し出す布の中に贈り物を置こうとしています。
ボッティチェリの特徴は、ふんわりとやわらかいタッチと、女性の視線にあると思います。
彼女達は皆、そこにあるものではなく、どこか遠くを透かして見ているような目をしています。
「学芸たちの集いに導かれる青年」 下の方はだいぶ剥がれています。
邦題の「学芸たち」の部分は、文字通り「自由七学芸/sept Arts libéraux」と表されることもあります。文法、修辞学、弁証法、算術、幾何学、天文、音楽、の7つの学問を差します。これは学問を体系的に捉えたもので、紀元を遡ると古代ギリシアまで到達します。最初の3つが、言語に関わる学問、後半の4つが、数学に関わる学問です。(音楽も理系科目なのですね。)
それぞれの学問が人物として象徴的に表現され、若者を取り囲んでいる場面です。
「若い婦人に贈り物を捧げるヴィーナスと三美神」
(Vénus et les Trois Grâces offrant des présents à une jeune fille)
「学芸たちの集いに導かれる青年」
(Un jenne homme présenté par Vénus(?)aux sept Arts libéraux)
ボッティチェリ/Sandro Botticelli 作 1483-1485年頃
<ドゥノン翼・2階/ダリュの階段 踊り場の脇>
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