ロダン美術館

パリにたくさんある美術館の中でも、管理人イチ押しのおすすめ美術館です。

晩年のロダンが暮らした住居兼アトリエの「ビロン館」が美術館となり、ロダンの作品、ロダンが収集した美術品、および弟子・カミーユ・クローデルの作品が展示されています。

展示数はかなり多めです。もともとが個人の邸宅ですし、彫刻は展示に場所をとることもあり、少し窮屈な印象を受けるかもしれません。しかしそれだけ、一度に多くの作品を鑑賞できるということでもあります。

「ロダン美術館では、思っていたより観るのに時間がかかった。」という感想をよく聞きます。
元来、「彫刻作品を観るのが好き」「ロダン、あるいはカミーユ・クローデルが好き」という自覚がある人は、長めに時間をとって出かけることをおすすめします。

美術館の中もさることながら、見ごたえがあるのが庭園です。
造りそのものが美しいうえに、手入れもよく行き届いています。たくさんの花が咲き、小さな噴水が静かな水音をたてる中、豊かな緑を背景に、ゆったりと配置された彫像を眺めるのは、室内での鑑賞とはまた違った趣があります。
特にバラの季節はおすすめです。

有名な「地獄の門」「考える人」「バルザック像」は庭園に配置されています。

美術館の入場料は10ユーロ。庭園だけの見学なら4ユーロで入れます。 庭園だけでも充分入る価値があります。入場料4ユーロでは、申し訳ないくらいに充実した時間が過ごせます。

ロダン美術館/Musée Rodin

最寄り駅 メトロ13号線 Varenne
開館時間 4〜9月 10:00〜17:45 *最終入場は17:15
     (庭園:10〜3月 〜17:00)
休み   月曜日 1/1、5/1、12/25
公式サイト:https://www.musee-rodin.fr/

ロダン美術館 訪問レポート(最寄り駅から庭園)

最寄り駅 メトロ13号線のVarenne駅のホームに降りると、さっそくロダンの代表作、「考える人」が出迎えてくれます。

メトロのホームという日常的で実用的な場所で見るせいか、強烈な存在感です。

反対側のホームには、バルザックまで!
「考える人」だけで充分なのに…。

幅の狭いホームで見るせいか、このバルザック像は、美術館の庭園で見るバルザック像より、大きくて威圧的な感じがします。
大きさ自体は一緒だと思いますが。

ロダン美術館入り口の外観。
ロダン美術館は、メトロの出口からゆっくり歩いても 5分かからないくらいの場所にあります。

入口のある建物を一旦出ます。
左手に写っているのが、ロダンの住んでいた建物「ビロン館」=美術館部分です。

ちなみに、写真中央に写っているドームは「アンヴァリッド」。軍事博物館やナポレオンの棺がある施設です。ロダン美術館とアンヴァリッドは徒歩圏内なので、同じ日に見学することも可能です。

庭園内で見学できる作品をいくつか紹介します。

ロダン「考える人/Le Penseur」

ロダンの代表作です。青空を背景に一生懸命考えています。
「考える人」は、もともと「地獄の門」という作品の一部分でした。

原型は高さ63cmと意外と小さいのですが、 ブロンズ彫刻には鋳型があるので、理屈的には同じ作品をいくつでも鋳造することが可能です。しかも縮尺を変えることも出来てしまいます。

現在、ロダン美術館によって真正品と認定されている「考える人」は、世界に21体存在しています。

この作品は、軽く見上げるくらいの高めの位置に展示してあります。この下で同じポーズをとって写真を撮るのが、観光客の定番の行為です。

ロダン「3つの影」

この3人は別々の人物ではなく、3人とも「アダム」です。
この作品「3つの影」も「地獄の門」の一部です。

同じ瞬間に同じ人物が複数存在することは、「地獄の門」が時空を超越していることの現れです。地獄の門では、これに限らず、同じ形の人物の反復がいくつか見られます。

「地獄の門」自体は重いテーマを持った作品ですが、こうして木漏れ日の輝く庭で、「3つの影」を見ると、美しさと力強さが際立ちます。

ロダン「地獄の門/La Porte de l’Enfer」

そして、これがその「地獄の門」です。
13〜14世紀のイタリアの詩人ダンテの代表作「神曲」に着想を得て作られました。神曲の地獄篇に登場する地獄への入口です。

「地獄の門」は、世界に7つあります。
日本では、上野の国立西洋美術館で見ることができます。

「地獄の門」の部分拡大。

最上部に「3つの影」、その下に「考える人」がいます。
地獄に堕ちて行く人を見つめ考えに耽るこの人物は、「ダンテ」とも「ロダン自身」とも言われています。

「地獄の入口で考える」という設定がある分、「考える人」単体で観るよりも、鑑賞者により強い印象を与えると思います。

ロダン「バルザック像/Balzac」

庭園内の「バルザック像」です。
緑のなかでゆったりとしていて、少なくともメトロのホームより、居心地は良さそうです。

「オノレ・ド・バルザック」は、19世紀フランスを代表する小説家です。この彫像は、バルザックの没後に、フランス文芸家協会がロダンに依頼し、造られたものです。

ロダンは、バルザック自身を最もよくあらわす姿を表現しようとしました。生前の資料にあたり、似た体型の人物のデッサンを重ねます。そして、深夜に悩みながら執筆にあたろうとするバルザック像を造りました。しかし、ガウン姿で苦悩するバルザック像は、文芸家協会の期待を裏切るものでした。彼らは、優雅で威厳に満ちた文豪の彫像を求めていたからです。

ロダンの制作に関する逸話には、このようなパターン(人物の本質を表現しようとするロダン vs 美しく表現してほしい発注者)が他にも見られます。
次の「カレーの市民」にも同じような要素があります。

ロダン「カレーの市民/Les Bourgeois de Calais」

カレー市は、英仏百年戦争で1年以上に渡って包囲されたフランス北部の街です。イギリス軍の要求をのんで、攻撃をやめることと引き換えに、街の城門の鍵と先導者をイギリス軍に差し出しました。右側に立っている人物「ジャン=ダール」の両手に握られているのが城門の鍵です。

それから約500年を経て、自ら犠牲となることを志した6人の名士達を讃える目的で、カレー市がロダンに作成を依頼したのが、本作「カレーの市民」です。

カレー市としては英雄的な表現を期待していましたが、ロダンは、死を目の前にした苦悩に満ちた姿で6人を表現しました。

この作品の成り立ちを知らずに鑑賞した人も、立ち尽くす6人の姿勢や表情などから、この作品に、人間の深く複雑な内面が表されていることに気付くはずです。

ビロン館の脇を抜けて庭園へまわってみます。美しい芝生が広がります。広い庭園の途中まで歩いたところで、振り返ってビロン館を撮影。
外国の絵本に出てくるお屋敷のイメージそのものです。

庭園内にはカフェもあります。
木漏れ日の下で ひと休み。

庭が相当広いということがお分かりいただけるかと思います。「庭だけ見学」という料金設定があるのも納得です。

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